2015年6月23日火曜日

猫町

青猫書房?

猫街? だれだっけ?

下北沢近辺にも住んでいた・・・

萩原朔太郎 猫町 散文詩風な小説 - 青空文庫


私はすべての印象を反対に、磁石のあべこべの地位で眺め、上下四方前後左右の逆転した、第四次元の別の宇宙(景色の裏側)を見たのであった。

猫町

散文詩風な小説

萩原朔太郎




はえたたきつぶしたところで、
蠅の「物そのもの」は死には
しない。単に蠅の現象をつぶ
したばかりだ。――
    ショウペンハウエル。

     1

 旅へのいざないが、次第に私の空想ロマンから消えて行った。昔はただそれの表象、汽車や、汽船や、見知らぬ他国の町々やを、イメージするだけでも心がおどった。しかるに過去の経験は、旅が単なる「同一空間における同一事物の移動」にすぎないことを教えてくれた。何処どこへ行って見ても、同じような人間ばかり住んでおり、同じような村や町やで、同じような単調な生活を繰り返している。田舎いなかのどこの小さな町でも、商人は店先で算盤そろばんはじきながら、終日白っぽい往来を見て暮しているし、官吏は役所の中で煙草タバコを吸い、昼飯の菜のことなど考えながら、来る日も来る日も同じように、味気ない単調な日を暮しながら、次第に年老いて行く人生をながめている。旅への誘いは、私の疲労した心の影に、とある空地あきちえた青桐あおぎりみたいな、無限の退屈した風景を映像させ、どこでも同一性の法則が反覆している、人間生活への味気ない嫌厭けんえんを感じさせるばかりになった。私はもはや、どんな旅にも興味とロマンスをなくしてしまった。

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