2013年12月24日火曜日

アーバンハンドブック

【原書の情報】
■ タイトル: The Urban Handbook – a practical guide to community environmental work
■ 仮題: アーバン・ハンドブック – 地域住民による環境保護活動の手引き
■ 作者: Elizabeth Agate
■ 総ページ数: 138
■ ISBN: 0 946752 15 X
■ 発行年: 1998年 改訂 2002年
■ 版権 BTCV(British Trust for Conservation Volunteers)
    UKのBTCVへ直接電話し、空いていることを確認した(2006/09/01現在)

■ 作者について:
BTCVに関わる環境保護活動を行なっており、石垣造り、生垣造り、池造り、道具の手入れなどに関する著作が10冊ほどある。

BTCVとは
British(英国)、Trust(信託)、for Conservation(保護)、Volunteers(志願者)、略してBTCV は、イギリス最大の自然環境の保護運動団体。1970年にこの名称で活動を始めた。
歴史的にはイギリス政府のCouncil for Nature(環境庁)の肝入りで1959年に作られたConservation Corp(自然保護組合)がその前身母体。イギリスもかつては豊かな森と湖を抱えた農業国だった。しかし近代の産業革命によって工業化が進み、この300年のあいだに国土の大半は森が切り払われて広大な牧草地に変えられた。
イギリスではいま、失われた森とそこに生息していた野生動植物を取り戻すための試みが本格化している。それを民間レベルで担っているのが BTCV である。

■ 対象読者 環境保護のために緑化などを推進する地域住民、自治体関係者、業者など
【レジュメ】
■ 目次:
はじめに
1.環境保護活動の立ち上げ
  グループの目的決め
  参加場所とプロジェクト決め
  参加者募集
  各グループ作り
  ネットワーク作り
  持続性、利害関係者、権限委譲
2.活動開始
  活動日
  ゴミと不法投棄
    球根の植え付け
    木などの地域からの入手
  イベントの開催
  種々の活動
  日々の活動
  週単位の活動
  海や田舎への休暇
  学童グループ
  木飾り
  壁画
  彫刻
  クラフト作り
  ドラマとダンス
  学生プロジェクト
  調査
3.人と場所
  認知
  使用
  介入
  相談
  参画意識
  破壊行為
  地域の差異
4.地域の生物
  地域の調査
  土壌と化学的性質
  気候
  植物相と動物相
  緑地の大きさと隔離
  地域の昔と今
5.地域における活動
  ゴミとガラクタと人工物
  経路
  腰掛け
  案内板
  垣根
  石垣
  フェンスと障壁
6.樹木
  地域の樹木
  植樹と基本ルール
  チェックリスト
  植樹の概要
  植樹の設計
  種類の選択
  植樹の実際
  長期の管理
7.草花
  近年の実情
  基本ルール
  地域の設計
  種まき
  一年生の草花
  多年生の草花
  種々の草花
  地域の野草と潅木
8.沼と湿地
  古い沼の回復
  新しい沼と湿地作り
  沼の手入れ
  水路と湿地
  渡り板、橋、土台
9.コミュニティー・ガーデン
  ティプトンのパーク・エステート
  各地の菜園
  ニューハム・養苗所
  老人ホーム
  ホリーブッシュ・ファーム
  パーマカルチャー・ガーデン
  セント・アントニー・スクール
  シーサイド・ガーデン
10.ワークショップ
  巣箱、動物小屋
  餌場
  ベランダとプランター
  リサイクルとコンポスト
  観察と理解
  種の収集と苗の育成
付録
A.保護活動とボランティア
B.健康と安全
C.協力会社
D.関係者連絡先
参考文献
索引


■  概要:
第1章はでは、地域における環境保護活動の立ち上げ方について述べる。
第2章では、活動の概要を項目別に述べる。
第3章では、住民が地域の緑地とどのように関わるかを細かく示す。さらに、住民がその緑地をどのように感じ、使い、効果的に管理するかを示す。また、参画意識と破壊行為の問題についても議論する。
第4章では、地域に生息する生物の範囲について述べる。その多くは地域特有のものである。その生物が土壌、気候、その他の多くの要因によってどのように影響を受けるかについて述べる。
第5章から第10章では、ゴミの廃棄、塀の作製、植樹、沼造り、巣箱作りなど、広範な環境保護活動の実際についてアドバイスする。
付録には、健康、安全、道具についての情報を載せる。

■  推薦する理由
日本でも地域住民による種々の活動が盛んになりつつある。イギリスの環境保護活動を系統的にまとめた本書は、日本においても参考となる。地域住民による緑化推進活動などには、特に参考になる。
【試訳】

原文:

Introduction

Recognizing the unique qualities of cities and towns is an important first step in understanding how best to contribute to environmental improvements. Diversity is what makes cities special. West Indian grocers, jostle Chinese supermarkets, Portuguese cafes and the Asian Community Action office sit alongside the English butchers and the Irish pub. The very diversity of the human population in cities, its multi-cultural nature, has led to lateral thinking by conservationists. While the need and desire to green the city and provide wildlife habitats is a major force behind urban conservation work, bringing relevance to your activities to involve a wide range of people in environmental action means taking an imaginative approach. In many city projects, consciousness-raising is just as valuable as practical conservation. Helping school children create a nature mural or design a cultural flower bed of plants from the West Indies may be just as valuable as tree planting with a residents’ group or creating a nature area with a group of conservation volunteers.

The breadth of work and the range of communities with which BTCV is now involved has expanded greatly in the past few years. They range from people on a housing estate trying to brighten the place up; a community group growing its own food; the patients and staff of a doctor’s surgery creating a physic garden; the local Chinese Community group encouraging their old folk to take up gardening; the church congregation turning their churchyard into a wildlife haven; or a ‘Friends of.....’ group taking on the practical management of a remnant ancient woodland. From window boxes to woodlands, via nature murals and tree dressing, the activities of the urban conservationist are as diverse as the population itself. Recycling, compositing and community art have joined the long list of activities of the urban conservationist.

Conserving and enhancing biodiversity is still high on the agenda. Cities, towns and suburbs are incredibly rich in wildlife, with a greater range of habitats than intensively farmed ‘countryside’. You’re more likely to see a fox in the town than in the country, and kestrels are common hovering above roadside verges. A pair of sparrowhawks has nested in the plane trees of a South London street, and hundreds of newts were discovered in a city school pond. On a hedge in a city school nature area five different wasp galls were found on just one plant, proving that biodiversity is alive and well and living in the city. Where the urban conservationist has been at work, you could visit a rich summer meadow, an ancient coppice woodland, a newly-laid hedge or a wetland teeming with life – all in just one afternoon.

School nature areas, community wildlife gardens and other similar areas are often small. Maintaining many different habitats in such small spaces, often under great human pressure, creates a need for particularly intensive management. While such a level of management is usually seen in negative terms, in cities this is a positive asset, providing lots of opportunities for active participation, training, practical conservation, education and community involvement.

The key to successful city greening is community action. Urban conservation is all about local people doing something in their locality with their neighbours, friends, work mates or club members, often with a knocking-on benefit to the rest of the community. The taking part can be as important as the end product. The creation of a community garden for a block of single person flats can lead to communication and exchange among the residents who might seldom have made contact in the past.

This handbook is aimed at anyone who is interested in urban environmental action, from the concerned individual, through to project officers with responsibility for engaging community action. The handbook begins by looking at how community function, and gives lots of ideas for getting started with days of action and other short term projects.

訳文:

はじめに

地域の環境改善に適切に貢献するには、まず地域の特徴を理解しなければならない。いろいろな人種が住んでいることは、地域の特質である。西インド諸島系食料雑貨店、混雑している中国系スーパーマーケット、ポルトガル系カフェやアジア系住民の地域社会活動事務所などが、イギリスの肉屋やアイルランド系のパブと軒を並べている。都市ではさまざまな人種がともに暮しており、環境保護活動家はその文化の多様性についていつも頭の隅で考えている。住民は地域を緑化し野生生物を生息させたいと望んでいる。それが主な力となり、地域の環境保護活動が進む。環境保護活動が必要だと分かれば、幅広い人たちを活動に巻き込むことができ、結果として創造的なアプローチを取れる。多くの地域プロジェクトでは、住民の意識を高めることは実際の保護活動と同じくらいに重要だ。生垣を作らせたり、西インド諸島産の植物で作る花壇のデザインをさせたりして、学童を手伝わせることには価値がある。住民のグループが木を植えたり、環境保護ボランティアのグループが自然園を作ったりするのと同じくらいの価値だ。

ここ数年で、BTCVが関わっている活動の幅は大きく広がり、コミュニティーの種類はますます増えている。これらは次のように幅広い。地域を明るくしようとしている住民、自分たちで食物を育てているコミュニティー・グループ、薬草畑を作っている病院の患者やスタッフ、老人を庭造りに参加させている中国人のコミュニティー・グループ、教会の敷地を野生生物のサンクチュアリに変える信徒、古くからある森の管理を実践する「・・・の仲間たち」など。地域の環境保護活動はさまざまで、植木箱を使ったり、森では、生垣を作ったり、木々の飾り付けをする。そこに住む住人がさまざまなのと同じだ。リサイクル、コンポジット、コミュニティー・アートなども、地域の環境保護活動の中に含まれる。

さまざまな生物を保護し活力を高めることは、いまだに重要な課題だ。町や住宅地などは、農業中心のいわゆる「田舎」と比べていろいろな人が住んでおり、野生生物も驚くほど豊富に棲んでいる。田舎よりも町中のほうが、キツネを見かけることが多い。チョウゲンボウ(小型のタカ)が道端の上空でなにげなく旋回している。ノスリ(小型のタカ)のペアが南ロンドンの路端のプラタナスの木に巣をかけている。イモリが学校の池でたくさん見つかる。スズメバチが学校の自然園のへりで一本の木に五つも巣を作っている。このようにさまざまな生き物が、町中にたくさんいることが分かる。町場で環境保護をしている人たちが活動している場所に行けば、豊かな牧草地、昔ながらの雑木林、新しい垣根、生き物であふれている湿地など、たった一日の午後の間だけで回れる。

学校の自然園、地域の野生庭園、ほかの似たような場所なども、多くの場合は狭い。人の圧力を受けながら、このような狭い空間に生息しているさまざまな生き物を保護するためには、集中的に世話をする必要がある。こういった世話はふつう嫌がられるが、町中では役に立つ。積極的な参加、訓練、実践的な環境保護活動、教育、地域の活性化などのために、たくさんの機会を提供している。

地域の緑化を成功させるカギは、コミュニティー活動だ。地域の環境保護は、住民が隣人、友人、職場仲間、クラブのメンバーなどとともに、地域の中で何らかの活動をすることに尽きる。多くの場合、その活動は周りの人たちに恩恵を与え続けることになる。参加することは、最終的に出来上がるものと同じくらい重要である。ばらばらに暮らしている人たちのために、コミュニティー・ガーデンを作れば、これまではめったに接触のなかった人たちの間にコミュニケーションや交流の場が広がる。

このハンドブックは、個人からコミュニティー活動の責任者に至るまで、地域の環境保護に関心のある人たちすべてを対象にしている。まずコミュニティーがいかに機能するかを示し、日常活動の立ち上げ、短期プロジェクトなどについてたくさんのアイデアを提供する。

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