2014年6月20日金曜日

金瓶梅

これも、読む必要がある。

紅楼夢がアポロ的、金瓶梅がディオニソス的


紅楼夢が読了したら、読んでみよう・・・


金瓶梅』(きんぺいばい)は、明代長編小説で、四大奇書の一つ。著者は笑笑生(生没年など不詳)。研究によると、万暦年間(1573年1620年)に成立したといわれている。
『金瓶梅』は『水滸伝』の外伝と位置づけられる作品である。水滸伝の武松のエピソードを入り口とし、そこに登場する武松の兄嫁の潘金蓮が、姦通した後殺されずに姦夫の西門慶と暮らし始めるという設定となっている。ストーリーが水滸伝から分岐した後は、富豪の西門慶に、金蓮も含めて6人の夫人やその他の女性がからみ、邸宅内の生活や欲望が展開してゆく。水滸伝同様に北宋末を舞台とするが、綿密かつ巧みに描写されている富裕な商人の風俗や生活には、代後期の爛熟した社会風俗が反映している。
タイトルの「金瓶梅」は主人公である西門慶と関係をもった潘金蓮、李瓶児、龐春梅の名前から一文字ずつ取ったものだが、それぞれ金(かね)、酒、色事、を意味するとも言われる。

河北清河県の大金持ちで放蕩者の西門慶は正妻の呉月娘以下4人の夫人がいるにも拘わらず、蒸し餅[1]売りの武大の妻、潘金蓮と密通して夫の武大を殺し、彼女を第5夫人にする。「水滸伝」ではここで西門慶と潘金蓮が武大の弟、武松によって成敗されるが、この作品では西門慶は逃げのび、武松は誤って別人を殺めてしまい、西門慶の働きかけもあって孟州に流される。西門慶はさらに隣家に住み未亡人となった李瓶児を第6夫人に迎え、潘金蓮の女中の龐春梅をはじめとする女中たち、使用人の妻たち、芸者たちとも関係を持ち情欲の限りをつくす。
その間に西門慶は役人と癒着、町の提刑所(検察と裁判を扱う役所)の長官となり、権力をかさに悪行を重ねる。その一方で商売も運送業や呉服屋で成功を収める[2]。潘金蓮は西門慶を相手にすねたり、怒ったり、また、西門慶の夫人たちや愛人たちと喧嘩をしたり、嫌がらせをしたり、彼女らの不満をあおったりして、さまざまな出来事を引き起こす。そのうちに李瓶児に待望の男児が生まれるが、嫉妬した潘金蓮は彼女や男児に嫌がらせをつづけ、最後には男児を猫に襲わせ死なせてしまう。子を亡くして失意の中、李瓶児は西門慶に対し、潘金蓮を警戒してほしいと言い残し病死する。
そのような不幸があったとはいえ、西門慶はすべての成功を手にしたのだが、潘金蓮は、西門慶が不思議な僧侶から貰った媚薬を、それとは知らず限度以上に西門慶に与えてしまい、西門慶は死んでしまう。西門慶の商才と権力に依存していた家業は破綻し、一人また一人と西門家を去っていく。潘金蓮は不祥事が露見して西門家を追い出される。同じ時期に孟州から戻ってきた武松に色目使いをするが、武松は兄の敵としてようやく潘金蓮を成敗する。
やはり西門家を追い出された春梅は名家に嫁いで他の女たちを見返すが、西門慶の娘婿で、かつて西門慶の家に住んでいた陳経済との再会で転落が始まる。陳経済が殺された後、夫も戦死し、春梅の生活は次第に自堕落なものになっていき、最後には使用人と関係している最中に急死する。
一方、西門家には正妻の呉月娘と西門慶の死後誕生した西門慶の子である孝哥(母は呉月娘)、その他義理堅い使用人たちだけが残されていた。ある夜、昔知り合った不思議な僧侶の寺に呉月娘らが滞在した。その時、僧侶の導きにより西門慶以下亡くなった者たちがそれぞれ別の地で生まれ変わって新しく生を受ける場面を目撃する。次の朝、実は孝哥は西門慶の生まれ変わりであることをその僧侶に示され[3]、その僧侶の勧めで、西門慶の前世の罪から救うために孝哥を仏門に入れる。呉月娘自身は頼りになる番頭に西門を名乗らせて、西門家の事業を継続させ、長生きして人生を全うした。
作品は次のような結びの詩でしめくくられる。
ひとり書読み嘆きにくれる
めぐる因果を誰が知ろ
豪奢西門世継ぎに困り
狂者経済刃(やいば)にかかる
楼の月影あくまで冴えて[4]
瓶の紅梅夜空にしぼむ[5]
あわれ金蓮咎めを受けて
浮名千年語り草
小野忍・千田九一訳, 『金瓶梅 第10巻』岩波文庫、1974年、p.300
閥閱遺書思惘然 誰知天道有循環
西門豪橫難存嗣 敬濟顛狂定被殲
樓月善良終有壽 瓶梅淫佚早歸泉
可怪金蓮遭惡報 遺臭千年作話傳
『金瓶梅』第一百回 韓愛姐路遇二搗鬼 普靜師幻度孝哥兒[6]


現存する最古のテクストである『金瓶梅詞話』の序に書いてあることから、作者は蘭陵の笑笑生とされるが、詳細は未だわからない部分が多い。「蘭陵」は山東省の地名で、文章にも山東省の方言語彙も見られることから、一般的には山東省の人と考えられている。その一方で、当時の大文人の王世貞が、当時権勢を振るっていた厳嵩厳世蕃親子を弾劾するために書いたとも言われるが、王世貞は江蘇省の人である。また、現在の上海語に近い呉語と共通する方言語彙も多く現れる[7]ことから呉語地域の出身者という見方もある。なお、蘭陵は名酒を産することで有名なことから、「蘭陵の笑笑生」とは「酒を飲みながら、笑って書いた」くらいの意味のペンネームであり、必ずしも蘭陵の人とは限らないのではないかと中国文学者の日下翠は述べている[8]

金瓶梅では、先行する水滸伝の世界ではほぼ省かれていた女性、愛欲、金銭、仔細な日常描写といった要素が全面的に展開されている。その描写は非常に詳しく、食べ物、飲み物について具体的に列挙されていたり、人物の容姿、着ているものやアクセサリー、その柄やデザイン、色の合わせ方、化粧の様子なども詳細に描写されていたり、会話や金銭の受け渡しなど人々の振る舞いが活写されている。あまりに詳しく書いてあるので、読んでいてうっとうしく思うという感想さえもたれるほどである[9]。また四大奇書の中でも、街で多数の演者により語られてきた講談を基に編集された『西遊記』『水滸伝』『三国志演義』とは異なり、一人の人物が緻密に構成して書き上げたという点で中国の白話小説でも画期的なものである[10]。『金瓶梅』は『水滸伝』のプロットを利用しているほかにも、男女の色事を題材とした一回ものの講談を基にした「話本」、これを模した白話短編小説の「擬話本」、事件や裁判を描いた「公案小説」、元曲などの引用や影響も多くみられる[11] 

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