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2010年2月7日日曜日

イルカの本 - 企画&翻訳済み原稿


【原書の情報】
■ タイトル: To Touch A Wild Dolphin
                  - A Journey of Discovery with the Sea’s Most Intelligent Creatures
■ 仮題: 野生のイルカとの触れあい - 海でもっとも知的な生き物の観察研究
■ 作者: Rachel Smolker(レイチェル・スモールカー)
■ 総ページ数: 274ページ(写真16ページ含む)
■ ISBN: 0-385-49176-X
■ 発行年: 2001
■ 作者について:(袖)
1982年にモンキー・マイア・ドルフィン・リサーチ・プロジェクトを共同で始めた。イルカの生活をあらゆる方面から洞察して、画期的な業績を残し続けている。ブリティッシュ・コロンビア、バハマ、ニュージーランドなど、世界中でイルカとクジラの研究に参加してきた。東南アジア、中央アメリカ、マダガスカルで霊長類の研究も行なってきた。現在は、バーモント大学のリサーチアソシエイトの職を持つ。ミシガン大学の動物学博物館と協力関係にある。ミシガン大学で博士号を取得。バーモント在住。

  書評:(裏表紙)
ほんのひと握りのサイエンティストだけが、自分の世界に他人を難なく導ける本を書ける。レイチェル・スモールカーはそのようなことができる数少ない中のひとりだ。イルカは人間と似ているようでもあれば、まったく違うようでもある。イルカが水の世界で生きるには、独特の感覚、スキル、反応などの能力が必要だ。スモールカーがその世界へ導いてくれる。タイトルが示すように、輝きを放ち、挑発的で、知的で、不思議で、とりわけ魅惑的と言ってよい本である。
  --Richard Ellis, author of Encyclopedia of the Sea and Deep Atlantic

この重要な本を読みなさい。パイオニア的研究だ。イルカが想像以上の不思議ですばらしい生き物であることを明らかにした。人間と異なるようでもあれば、似ているようでもある。われわれの仲間としてイルカをみなすためのランドマークとなる。
--Sy Montgomery, author of Journey of the Pink Dolphin

【レジュメ】
■ あらすじ
 60歳過ぎのエネルギッシュなエリザベス・ゲイウェンは、1981年に仕事を引退して世界各地を旅している。アメリカのサンタクルーズにある研究所に立ち寄り野生のイルカについて報告した。オーストラリアのパースの北、850Kmにモンキー・マイア(猿の居住地、現在は世界遺産)という場所がある。あまり知られておらず、研究場所として最適だ。野生のイルカが人から手渡しでエサをもらっている。報告を聴いていた著者に、ゲイウェンは「あなたは、必ずそこへ行くよ」と告げて立ち去った。
 19827月、クラスメートのリチャード・コナーとアメリカを発ち、ゲイウェンの予言どおり、はじめてモンキー・マイアを訪れた。野生のイルカにはじめて触れたのは、メスのホーリフィンだ。個体識別の方法を研究した。はじめのうちは背びれで見分け、そのうちに顔や体やしぐさで見分けられるようになった。イルカには、まさに人間と同じような個性があることが分かった。人と接するのがうまい、人になつかないおてんば娘、複雑で頭のいい気分屋、少々シャイな感じ、興奮しやすく攻撃的で動きがすばやい、などの個性がある。
 著者とリチャードは、一日中イルカと共にし、テープレコーダーで記録した。観察ノートも取り、観察スキルを磨いた。だが、野生のイルカがいつ、どのようにして、人と触れあうようになったかは、いまだに謎だ。著者は、偶然にそうなったと推測している。手渡し餌付けの元祖は私だと主張する人もいる。モンキー・マイアでの人とイルカの触れあいがどのように始まったかは分かっていない。南半球では10月ころから夏場に入る。イルカもあまり現れなくなり、さそりが出たりもする。暑さに耐えられなくなり、帰ることにした。今回は表面をかじっただけだが、予想以上の収穫があった。データを系統的に収集して検討すれば、無限の可能性があると思えた。そして、モンキー・マイアを後にした。
 19847月、クラスメートのサリー・ビバーズが加わって、モンキー・マイアへ戻った。それ以降、10年以上にわたり研究を行ない、本書を書き上げた。研究内容は、イルカと海綿、ビッグ・バン、イルカの社会、イルカの同盟、子育て、ホイッスルとクリックス、イルカの知能と感情、イルカのコミュニケーションなどだ。
 環境保護と観光開発などについても実例が述べられている。世界各地で漁具によってイルカが傷ついたり死んだりしている。中国のある川では、ダム、舟、漁具、汚染のために、川イルカがほぼ絶滅した。




  主な登場イルカなど
エリザベス・ゲイウェン:著者がモンキー・マイアのイルカに会いに行くと告げた。

ホーリフィン:背びれにえんどう豆大の穴が開いている2歳と7歳の娘を持つ20歳少し前の母親。野生とは思えないほど、人と触れあうのがうまい筋金入り。

ニッキー:ホールフィンの7歳の娘。背びれの上部に23箇所の裂け目がある。あまり人になつかないおてんば娘だが、気に入った人にはとてもなつく、複雑で頭のいい気分屋。

クルックドフィン:6歳の娘を持つ母親。背びれが曲がっている。少々シャイな感じ。

パック:クルックドフィンの6歳の娘。母親似でなく、デリケートであったり攻撃的になったりする。

ビビ:美しい青年。興奮しやすく攻撃的で動きがすばやい。

スノッブノーズ:大人の男性。はじめのころは警戒心が強くあまり近寄らない。口先を突き上げておどけるので、この名前にした。


  推薦する理由:
著者の15年に渡る研究の成果であり、著者のライフワークの一環とも言える。イルカを個体識別し、家族関係や仲間関係を分かりやすく説明している。観察場所は世界遺産にもなっているオーストラリアのモンキー・マイア。知られていなかったオスの同盟やダークサイドな面などについても明らかにした。魚を捕まえるときに行なう海綿利用やイルカの子育てなども興味深い。そのイルカたちとの触れあいを通して、イルカ物語風に描いている点が特徴である。くわえて、進化論や行動学などについても述べている。さらには、サイエンス・アドヴェンチャー風の旅行記という感じもする。古き良きアメリカの大学、カリフォルニア大学・サンタクルーズをベースにしたフィールド・ワークが主体の研究報告でもある。

高校生や大学生や若者の啓蒙書としても使えそうだ。くわえて、ひとりのタフで自由な女性の生きかたという観点から見ると、年配の方にも興味深いと思う。


目次と訳文の抜粋

野生のイルカとふれあう ¦ 世界遺産に生息する知的生命体発見の旅

                        レイチェル・スモールカー 著
                                青柳洋介 訳
目次

    プロローグ        1
      イルカにであう
      イルカはかしこいのか?
一章  モンキー・マイアへ    17
      ふしぎなおつげにさそわれて
二章  初めての訪問       27
      イルカもきもちをあらわす
      わかちあう
      イルカをまもる
三章  イルカのもとへ      51
      モンキー・マイアがよんでいる    
四章  シャーク湾        63
      じゆうといきていることをかんじる
      オーストラリアのれきしをしる
      おおまかにしぜんをしる
五章  野生のイルカを追跡    81
      かがくてきにかんさつする
      にちじょうをかんさつする
六章  イルカと海綿       105
      イルカもどうぐをつかう
七章  ビッグ・バン       115
      たましいはガイアとともにある
      イルカはスタンガンをもっている
八章  イルカの社会       135
      オスはダークなめんをもつ
九章  男たち          147
      オスはどうめいをくむ
      オスはたたかう
十章  母、娘、姉妹       171
      こどもをうんでそだてる
      セックスをする
十一章 ホイッスルとクリック   187
      はなしあう
      はなしかたをけんきゅうする
十二章 モンキー・マイアの生活  215
      サイクロンがくる
      リゾートにかわる
十三章 イルカの知能と感情    239
      きょうりょくする
      きょうかんする
十四章 イルカの保護       257
      しぜんをほごする
    エピローグ        269
      イルカもわたしもいきている
    謝辞           273
    訳者あとがき

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