CISC(しすく、英: Complex Instruction Set Computer)は、コンピュータの命令セットアーキテクチャ(ISA)の設計の方向性の一つである。単純な命令を指向したRISCが考案されたときに、対比して従来のISAは複雑であるとして、"Complex" の語を用いた "CISC" とレトロニムとして呼ばれる様になった。典型的なCISCのISAはしばしば、単一の命令で複数の処理を行う、可変長命令である、直交性がある、演算命令のオペランドにメモリを指定できる、などで特徴づけられる。
CISCを採用したプロセッサ(CPU)をCISCプロセッサと呼ぶ。CISCプロセッサに分類されるプロセッサとしては、マイクロプログラム方式を採用したSystem/360、PDP-11、VAXなどや、マイクロプロセッサの680x0、x86などがある。
1990年代には「CISCはRISCに置き換わる」との予測もあったが、実際にはCISCプロセッサの多くは内部的にRISCの技術を採用し、またRISCプロセッサの多くは命令数の追加を続けたため、2000年代には技術的な相違はほぼ消滅した。このため現在の「CISC」や「RISC」は、技術的な用語よりも、各プロセッサの歴史的な総称として使われている。
「CISC」は「x86およびx64や、伝統的なメインフレームやミニコンピュータの各専用プロセッサなど」、「RISC」は「SPARC、MIPS、ARM、PA-RISC、POWERなどのマイクロプロセッサ」の意味で使われる場合が多い。なおIA-64はPA-RISCの後継でもあるが、EPICアーキテクチャという独自のアーキテクチャを採用しており、RISCには分類しない場合が多い。また32ビットARM(64ビットARMは典型的なRISCに近い)や、POWER・PowerPCはRISCの典型からは外れたアーキテクチャだが、一般的にはどちらもRISCに分類される。
2009年現在の各市場での採用傾向は以下である。
- パーソナルコンピュータ市場(PC/AT互換機およびMacintosh)では、CISC(x86)がほぼ独占している(PowerPCやARMを搭載したパソコンも存在するが、売り上げは極めて小さい)。
- UNIXサーバー市場は、ローエンドはCISC(x86)、ハイエンドは各社RISC(SPARC、POWERなど)が比較的多い。
- メインフレーム市場は、CISC(z/Architecture、ACOS、IA-64、x86など)が大多数である。
- スーパーコンピュータ市場は、CISC(x86)が約9割、RISC(POWERなど)が約1割であり[1]、ベクトルプロセッサ(NEC SX、演算プロセッサはRISC風の命令セット)搭載のシステムも若干ある。
- 組み込み市場では、RISCが優勢である。チップサイズ及びフットプリントが小型で、省電力かつ高性能なプロセッサが強く求められるため、32bit以上の比較的高性能なプロセッサではRISCに強みがある。
- 携帯電話市場はRISC(主にARM)がほぼ独占しているが、スマートフォンには x86 SoCを採用した製品もある。
- ゲーム機市場は2013年にRISCの独占は破れて PlayStation 4 と Xbox One がx86に切り替わった。携帯型ゲームは2014年現在も全てRISCである。
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