ガイア思想はグローバリズムとローカリズムの両方を言っている。
NASAに勤務していた大気学者であり、化学者でもあるジェームズ・ラブロックによって1960年代に仮説が提唱された。ラブロックは当初、この理論を「自己統制システム」と命名したが、後に作家のウイリアム・ゴールディングの提案により、ギリシア神話の女神「ガイア」にちなんだ名前へ変更した(科学者の中にはメタファーに対する理解が乏しかったりメタファーを嫌ったりしている者が多いので、この「ガイア」という命名が、科学者の感情的な反発を招いた面もある、ともいわれる)。
当初は主に気候を中心とした、生物と環境の相互作用についての理論であり、何らかの「恒常性」が認められる、とした仮説であった。当初は理解されなかったが、次第に賛同者を得て、シンポジウムも開かれ、批判によって理論が鍛えられ緻密化するとともに、さらに多くの賛同者を得て、当初は否定的だった科学誌『Nature』も、やがてこの説を評価するようになり、1990年代以降には、公式に認められたといってよいような状態になっている[1]。
ガイア理論では、地球があたかもひとつの生命体のように自己調節システムを備えている、としている。そのような観点に立つと、地球環境に対して人為的な介入を行うことについては、現代の科学技術による近視眼的・部分的・単細胞的な措置を計画したりするのではなく、もっと、地球の大きな生命の流れ(とでも呼んだほうがよいような、全体的な何か)に配慮したうえで判断をすべきだ、との見解・説も生まれている。ガイア理論の、このような全体論的な地球の把握方法は、(エコロジーを人間の利益中心の視点で捉えるのではなく)生態系がそれ自体で固有の価値を有しているからエコロジーを行うのだ、とするディープエコロジーにも大きな影響を与えている[4]。
現在でこそ、地球が地球それ自体の機構と組成を調整していることは多くの科学者に理解されるようになっているが、ガイア理論が発表された当時は、主流科学者たちに地球が生命の影響を受けている(地球が生命による調節を受けている)ということを納得させられるとはとても思えなかった[2]、とラブロックは述べており、当時の学会はそのような雰囲気だったのである。
多くの初期の批評の後、改訂され、理論面でも強化されたガイア理論は、現在、基礎生態学上の研究の究極の目的である地球化学と同一の生態学のひとつとして論議されている。 一般に、生態学者は、生物圏=(生態系+ガイア理論)であるとみなしているが、そのオリジナルの簡素化と、生物圏と生物多様性の概念を継承して、グローバルな現代生態学のビジョンと一致しているように提案した。 ガイア説は、生物相と、海洋と、地圏と、大気との相互作用を考慮に入れた上で、地球生理学あるいは地球システム科学と呼ばれている。
ネスはそれまでに存在した環境保護の活動を「シャローエコロジー」(Shallow ecology)とし、欠けている分野を深めたものを「ディープエコロジー」と名づけた。ネスによると、すべての生命存在は、人間と同等の価値を持つため人間が生命の固有価値を侵害することは許されない。従来の環境保護運動では、環境保護は人間の利益のためでもあると理由づけされていたが、ディープエコロジーにおいては環境保護それ自体が目的であり、人間の利益は結果にすぎない。
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