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2015年9月14日月曜日

歌会始2015@紅楼夢

天皇陛下
夕やみのせまる田に入り稔りたる稲の根本に鎌をあてがふ

 皇后さま
来(こ)し方(かた)に本とふ文(ふみ)の林ありてその下陰に幾度(いくど)いこひし

 皇太子さま
山あひの紅葉深まる学び舎に本読み聞かす声はさやけし

 皇太子妃雅子さま
恩師より贈られし本ひもとけば若き学びの日々のなつかし

 秋篠宮さま
年(とし)久(ひさ)しく風月(ふげつ)の移ろひ見続けし一本の巨樹に思ひ巡らす

 秋篠宮妃紀子さま
日系の若人かたりぬ日本へのあつき思ひと移民の暮らしを

 秋篠宮家長女眞子さま
呼びかける声に気づかず一心に本を読みたる幼きわが日

 秋篠宮家次女佳子さま
弟に本読み聞かせゐたる夜は旅する母を思ひてねむる

 常陸宮妃華子さま
新しき本の頁(ページ)をめくりつついづく迄読まむと時は過ぎゆく

 寛仁親王妃信子さま
松山に集ひし多くの若人の抱へる本は夢のあかしへ

 寛仁親王長女彬子さま
数多ある考古学の本に囲まれて積み重なりし年月思ふ

 高円宮妃久子さま
来客の知らせ来たりてゆつくりと読みさしの本に栞(しをり)入れたり

 高円宮家長女承子さま
霧立ちて紅葉の燃ゆる大池に鳥の音響く日本(にほん)の秋は

◆召人
 春日真木子さん
緑陰に本を繰りつつわが呼吸(いき)と幸(さき)くあひあふ万の言の葉

◆選者
 篠弘さん
送られし古本市のカタログに一冊を選(よ)るが慣ひとなりぬ

 三枝昂之さん
音読の声が生まれる一限目明日(あす)へ遠くへ本がいざなふ

 永田和宏さん
本棚の一段分にをさまりし一生(ひとよ)の量(かさ)をかなしみにけり

 今野寿美さん
秋の気の音なく満ちて指先に起こしては繰る本こそが本

 内藤明さん
開かれて卓上にある一冊の本を囲みて夕餉(ゆふげ)のごとし

◆入選者(年齢順)
 奈良県 伊藤嘉啓さん(78)
若き日に和本漁りぬ京の町目方で買ひし春の店先

 新潟県 吉樂正雄さん(77)
おさがりの本を持つ子はもたぬ子に見せて戦後の授業はじまる

 愛知県 森明美さん(74)
竹垣の露地に仕立てた数本の太藺(ふとゐ)ゆらして風わたりけり

 長野県 木下瑜美子さん(72)
大雪を片寄せ片寄せ一本の道を開けたり世と繫がりぬ

 千葉県 平井敬子さん(59)
「あったよねこの本うちに」流された家の子が言ふ移動図書館

 埼玉県 森中香織さん(58)
本棚に百科事典の揃ひし日に父の戦後は不意に終はりぬ

 茨城県 五十嵐裕治さん(57)
二人して荷解き終へた新居には同じ二冊が並ぶ本棚

 神奈川県 古川文良さん(46)
雉さんのあたりで遠のく母の声いつも渡れぬ鬼のすむ島

 岡山県 中川真望子さん(17)
暑い夏坂を下ればあの本のあの子みたいに君はゐるのか

 神奈川県 小林理央さん(15)
この本に全てがつまつてるわけぢやないだから私が続きを生きる

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