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2020年6月25日木曜日

小説

新しい日常における小説は?
東日本大震災と大きく異なる点は、すべての人類に共通に関わる自然災害です。

私はこう考える
いま生まれている「クリエイティブ」をつぶさない
芥川賞作家 平野啓一郎さん

人間関係の機微など人の内面に迫る数々の著作を書いている芥川賞作家の平野啓一郎さん。平野さんは、在宅で過ごす時間の増加など新型コロナウイルスの影響が、私たちの暮らしや考え方にどのような変化を及ぼすのか注視しています。環境の変化にストレスや不安を強める人も少なくない中で、この先の時代にどのようなことが希望となり得るのか、考えを伺いました。

“コロナ禍”の人間関係は、距離の制約から解放された
Q.新型コロナウイルスは暮らしの様式やコミュニケーションの取り方にも大きく影響を及ぼしていますが、どのように受け止めていますか?

平野さん
人間関係が物理的な距離の制約から解き放たれて、自分にとって心情的に本当に近い人との関係がより濃密になる機会だったのではないかなと思います。

今までの社会は対面する方がオンラインのコミュニケーションよりもより重要というか、本当のコミュニケーションなんだという考え方がかなり強かったと思います。

しかし、実際にオンラインのコミュニケーションツールでやりとりしてみると、十分それで済むことも多いし、友達と話すにしても居酒屋に行って遅くまで飲み食いしながら話すのも楽しいけど、案外オンライン飲み会でも楽しいなっていうのはこの間にみんな気づいたと思うんですね。

ですから今まであったようなフィジカルな世界こそが序列的には上で、オンラインはその下なんだという価値観を否応なく1回、解体せざるをえなかったと思います。

平野さんが唱える「分人」という考え方
平野さんは、人間には相手や場所に応じて変化する多様な自分があるとして、「分人(ぶんじん)」という考え方を自身の著作などで唱えています。外出自粛などで多くの人が人間関係の変化によるストレスを感じた今こそ、分人という考え方を知って欲しいといいます。

平野さん
「人間は対人関係ごとにいろいろな自分を生きている」というのが僕自身の基本的な人間観なんですね。妻といる時の自分、子どもといる時の自分、あるいは編集者と一緒の時の自分とか、昔なじみの友達といる時の自分というのは、それぞれちょっとずつ話題も表情も、物の考え方も違ってくるわけです。



(中略)



平野さん
文学もそれに寄与するようなものでなければなかなか共感を持って読まれないのではないかと思います。

大事なことは、こういう風にしたらいいんじゃないかといういろいろなアイデアがいま、出てきていますが、そういうクリエイティブな発想を、日本によくあるできない理由、やらない理由を100個も200個も挙げてつぶしてしまわないことが重要です。

うまくいかないこともあると思いますけど、その意欲までつぶしてしまうと社会が前に進めなくなってしまいますから。

意欲的な取り組みを行ってうまくいけばみんなで喜ぶし、うまくいかなければ次の手を考えようと切り替えていく発想と行動力がすごく求められていると思います。

この国をどうしていくかは、平時でもそうですし、今回のような非日常的な状況でも、民主主義国家ですから国民が主体的なって考えていかないといけない。

専門家の意見を踏まえて、日本はどうするんだという総合的な判断を行うのは政治ですから、それに対して国民はこうあってほしいとか、こういうことが困ってるという声を素直に上げていくべきだと思います。

【プロフィール】

平野啓一郎(ひらの・けいいちろう)

1975年生まれ。福岡県北九州市で育ち、京都大学法学部を卒業。1999年在学中に文芸誌「新潮」に投稿した「日蝕」で第120回芥川賞受賞。人間関係の機微など人の内面に迫る数々の作品で知られる。

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