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2021年10月8日金曜日

第5波抑制理由(5人の専門家)

コロナ感染者なぜ急減 ワクチン 免疫 人出? 専門家5人の見方は
2021年10月7日

新型コロナウイルスの感染確認は、なぜ急速に減少に転じたのでしょうか。「第5波」で東京都では、8月中旬に1日あたりの感染確認が6000人にせまりましたが、10月4日には11か月ぶりに100人を下回りました。全国でもピーク時の25分の1以下となっています。その理由について5人の専門家の見方です。

感染の減少傾向続く 東京は警戒レベル下げる
新型コロナウイルス対策について助言する厚生労働省の専門家会合で6日示された資料によりますと、新規感染者数は5日までの1週間では前の週と比べて、全国では0.53倍と、ほぼすべての地域で1か月以上にわたって減少傾向が続いています。首都圏の1都6県では、最も減少幅が大きい群馬県で前の週の0.46倍、減少幅が小さい栃木県で前の週の0.61倍となっていて、全国と同様に減少傾向が続いています。

7日に開かれた都内の新型コロナウイルスの感染状況と医療提供体制を分析・評価する都のモニタリング会議で専門家は、先週、4段階のうち2番目の警戒レベルに引き下げた感染状況について、さらに引き下げ、初めて上から3番目となりました。
また、入院患者も減り続け、6日時点では751人と、第5波のピーク時のおよそ6分の1になっていて、専門家は医療提供体制について、最も高い警戒レベルから一段、引き下げ、2番目のレベルにしました。2番目のレベルになるのはおよそ10か月ぶりです。

急速に減少したのはなぜか 5つの要素

急速に減少したのはなぜか。9月28日、緊急事態宣言の解除が決まった際の記者会見で、政府分科会の尾身茂会長は5つの要素を挙げました。

感染拡大要素がなくなった
7月下旬から8月にかけて、夏休みや連休、お盆休みといった人の移動が活発になる要素が集中する時期が過ぎ、要素がなくなったことが減少の背景にあると考えられています。

医療危機伝わり感染対策
感染しても医療機関で受け入れられなくなって、自宅での待機をせまられたり、自宅で亡くなる人が出たりするなど、医療が危機的な状況に陥ったことが広く報道されたことで、危機感が高まり、一般の人たちがさらに感染対策に協力するようになったと分析されています。

夜間の人出が減少
感染が拡大しやすい繁華街での夜間の人出では、東京都では、8月中旬ごろから9月下旬にかけ、4回目の緊急事態宣言が出される前の7月上旬に比べて25%から40%ほど減少した状態が続きました。
さらに、このうち、年代ごとのワクチン接種率から試算すると、ワクチンを接種していない人で夜間に繁華街にいた人は、7月上旬に比べて70%程度減少したとみられるとしています。
このため、去年春の1回目の緊急事態宣言のときと同じ程度の水準まで大きく減った可能性があるとしています。

ワクチン接種の効果
東京都のデータによりますと、2回のワクチン接種を終えた人は、8月10日の時点で50代が18.7%、40代が11.4%などと低い状態でした。
一方で、緊急事態宣言の期限だった9月30日の時点では50代が69.4%、40代が58.9%などと上昇しました。さらに30代で49.1%など、若い世代でも高くなってきています。

また、2回のワクチンの接種を終えた人は、政府のデータでは9月中旬には全人口の50%を超え、高齢者では90%近くになっています。特に高齢者では接種が先に進んだため、これまでの感染拡大では多かった医療機関や高齢者施設での高齢者の感染が大幅に減ったとみられています。

天候の影響
気温や雨などの影響を受けた可能性も指摘されています。尾身会長は「科学的な根拠はまだない」としながら、気温が下がって屋外での活動がしやすくなり、感染が起きやすい狭い空間での接触の機会が減った可能性があると指摘しています。

どの要因がどの程度、感染の減少に寄与したか、判断するのは難しく、さらに検証を進めるとしています。


減少の理由や今後について、ほかにはどのような見方があるのでしょうか。4人の専門家の見方です。

“ワクチン接種の拡大 季節的な要因も”

専門家会合メンバー 国際医療福祉大学 和田耕治 教授
ワクチンを多くの人が接種したことや、さらに涼しくなって冷房の効いた室内での活動が減って人と人との距離が確保されやすくなったという季節的な要因も考えられると思う。ただ、複数の要因がそれぞれどの程度感染減少に貢献しているか、数値として示すことはなかなか難しいと考えている。
これから冬にかけて気温が大きく下がってくると、感染が再び広がる可能性がある。ワクチンや感染によって免疫を獲得している人の割合が比較的少ない10代後半から20代の若い世代が感染の中心になり、そこからワクチンを接種していない中高年層に感染が広がり、重症化してしまうという流れが懸念される。


“集団の中で免疫を獲得している人の割合増”

感染症に詳しい長崎大学熱帯医学研究所 山本太郎 教授
公表される感染者数が、実態と比べてどの程度妥当なのかということの検証がないと減少要因についても正しく評価ができないと考えている。
ただ、ワクチン接種の広がりや感染を経験した人が増加したことによって、集団の中で免疫を獲得している人の割合が増えてきていることは確かだと思う。これからコロナが日常的にあっても人的、社会的、経済的に許容できるレベルに抑えられる社会を目指すのだとすると、どこが許容できるレベルなのか議論することが必要だ。感染者の数を指標として流行状況を評価するのではなく、重症者や亡くなる人の数の推移といった指標に重点が移っていくフェーズに入りつつあると考えている。


“接触で流行 冬に向けて準備が必要”

専門家会合メンバー 京都大学 西浦博 教授
減少要因については現在、分析している途中だが、1つ言えることは、連休などがあると1人から何人に感染させるかを示す指標の『実効再生産数』が上昇する傾向が見て取れ、緊急事態宣言の間でも上昇していた。普段会わない第3者と会う、遠出をして飲食するというような、ひとりひとりの接触行動が2次感染に寄与することは間違いないと考えている。
今後、ワクチン接種が進んだとしても無秩序に接触が起これば必ず流行が起こると思う。冬に向けて準備が必要だ。


“若者で増えて若者で減った”

専門家会合座長 国立感染症研究所 脇田隆字 所長
夜間の繁華街での人出の減少やワクチン接種が進んでいることが要因として分析されているが、それだけではこの減少の速度は説明できない部分がある。今回の感染拡大では、若い世代の間で増えた感染が、ワクチンの効果などで高齢者に移行せず、『若者で増えて若者で減った』という動きになった。
複数ある要素がそれぞれどの程度、感染減少に関わっているのか十分に解明できていないので、引き続き分析したい。
新型コロナウイルスのゲノムを随時分析しているが、感染が急増していたときと急速な減少が見られる現在のデータを比べてウイルス自体に大きな変化があるわけではない。ウイルス自体が弱毒化しているということは現時点ではないのではないかと考えている。


感染対策の継続を
厚生労働省の専門家会合は6日、新規感染者数は今回の感染拡大前の水準まで減少し、重症者数や亡くなる人の数も減少が続いていると分析した一方で、緊急事態宣言などの解除による行動制限の緩和で人と人との接触機会が増えることで、感染の再拡大につながる懸念もあるとして、マスクの正しい着用や1つでも密を避けるなどの感染対策を続けるよう呼びかけました。

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