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「フリーランス」で働く人 コロナ感染拡大前の2倍近くに
2021年9月24日 1時40分
企業に雇用されていない「フリーランス」として働く人について人材仲介会社が調査を行い独自に推計した結果、感染拡大前の2倍近くに増えたとみられることがわかりました。
フリーランス 去年の同じ時期の2倍近くに
人材仲介会社「ランサーズ」は、ことし1月から2月にかけてインターネットで行った3000人余りへの調査と国の労働力調査をもとに、独自に推計を行いました。
それによりますと、企業に雇用されていない「フリーランス」として仕事を請け負い、生計を立てている人は551万人にのぼり、去年の同じ時期の2倍近くに上っています。
また、オンラインを通じて一日や数時間などの単発の仕事を受けて働く「ギグワーカー」は308万人と、去年の同じ時期のおよそ5.3倍に急増したとしています。
企業と雇用契約を結んで正社員や非正規雇用で働いていた人が、新型コロナウイルスの影響による失業や収入の減少で生活に困った時に収入をすぐに確保したいと「ギグワーカー」などとして働くケースも少なくないとみられます。
調査を行った人材仲介会社は「感染拡大の影響で収入に不安を感じた人が増えたとともに、配達員など誰でもできるいわゆる『ノンスキル・キャリア』の仕事の選択肢が広がったことが『フリーランス』や『ギグワーカー』の大幅な増加につながったとみています。今後もこの傾向は続き、企業に雇用されずに働く人は増加していくと考えられます」と話しています。
セーフティーネット整備求める声
新型コロナウイルスの感染拡大による影響が続く中、企業に雇用されない「フリーランス」として働く人からはセーフティーネットの整備を求める声が相次いでいます。
東京の「フリーランス協会」が去年12月からことし1月にかけて「フリーランス」として働く人を対象に感染拡大による影響などについてインターネットでアンケート調査を行ったところ、700人余りから回答がありました。
それによりますと、感染拡大前の2019年度の収入と比べて2020年度の収入が「減少となった」と回答した人は55%でした。
このうち「4割から6割減少」は19.3%「7割から9割減少」は10.3%「収入が全くない」は3.1%で収入が4割以上減少したのは合わせて32.7%と3人に1人に上りました。
アンケート調査では、働き方の違いにかかわらず社会保障が提供されることが必要かを尋ねたところ「とても必要だと思う」や「どちらかといえば必要だと思う」と答えた人が合わせて95.7%でした。
また、仕事を失った時に失業手当が支払われる雇用保険に加入できるとしたら加入したいかを聞いたところ「加入したい」や「どちらかといえば加入したい」と答えた人は合わせて68.1%でした。
フリーランス協会では、病気やけがなどで働けなくなった時の収入を補償する保険について民間の保険会社と連携して個人で加入するよりも保険料の負担を抑えたサービスなどを提供してきました。
こうした保険への加入を希望する人は増えていて協会の会員の数は今月1日の時点で8348人と、感染拡大前の2倍以上に増えたということです。
協会の会員はこれまで、エンジニアなど高度なスキルがある人たちが多かったということですが、宅配ドライバーやフードデリバリーの配達員など収入が不安定な人たちも増えているとみられるということです。
調査を行った「フリーランス協会」の平田麻莉代表理事は、「“コロナ禍”で増えているフリーランスの多くは自分が体を動かして働く労働集約的で非常に弱い立場で仕事をしているのが実情です。働き方が多様化する今、企業に雇用されているかどうかだけでセーフティーネットの質がかわらないように制度の見直しを進めてほしい」と話しています。
専門家「制度が実態に追いつかなくなっている」
労働政策に詳しい第一生命経済研究所の星野卓也主任エコノミストはフリーランスのうち、特に一般の労働者と変わらない働き方をしている人たちの生活を守る制度を、検討する必要があると指摘します。
星野主任エコノミストは「フリーランスという体裁をとっていても、実質的には雇用されているのと変わらないような方もたくさんいると思う。社会保障制度が、実態に追いつかなくなっている。こういった人たちを中心にセーフティーネットの充実はもっと議論されてよいのではないかと思う」と話しています。
「フリーランス」保護のガイドライン
政府は去年7月に決定した成長戦略の中で、フリーランスが安心して働ける環境を整備するために取り組むという方針を示しました。
この中では、多様な働き方の広がりなどの観点からも個人がフリーランスを選択できる環境を整える必要があるとしたうえで、新型コロナウイルスの感染拡大でフリーランスとして働く人に大きな影響が出ていて保護するためのルールの整備を行うとしています。
この方針に基づいてことし3月には「フリーランス」として働く人を保護するためのガイドラインを公表しました。
具体的には、フリーランスを「自営業者で経験やスキルなどを活用して収入を得る人」としたうえで仕事を発注する事業者とフリーランスとの間の取り引きには公正で自由な競争を促す独占禁止法が適用されると明記しました。
そのうえで、正当な理由がなく報酬を著しく低く設定したり、支払いを遅らせたりする行為、それに一方的な仕事の取り消しは、優越的地位の乱用にあたるとしています。
また、フリーランスとして働いていても発注する事業者から指揮命令を受け勤務場所や勤務時間を管理される場合などは労働者とみなして労働基準法や労働組合法などが適用されるとしました。
事業所は労働時間の規制などを守るよう求められるほか、団体交渉を正当な理由なく拒むことが禁止されるなどとしています。
また仕事でけがをしたり、病気になったりした時に治療の費用などが給付される労災保険について、厚生労働省は料理などを自転車で届けるフリーランスの配達員などについてみずから保険料を負担することで特別加入を認め運用を始めています。
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