紅楼夢(こうろうむ、繁体字:紅樓夢、簡体字:红楼梦、ピン音:Hóng Lóu Mèng、ウェード式:Hung Lou Meng、粤ピン音:hung⁴ lau⁴ mung⁶)は、清朝中期乾隆帝の時代(18世紀中頃)に書かれた中国長篇白話小説。作者は曹雪芹とするのが定説だが、別人であるとする異説もある。『三国志演義』『水滸伝』『西遊記』とともに旧中国の傑作古典小説に数えられ、『中国四大名著』とも言われる。石頭記(せきとうき・いしき)ともいう。
上流階級の賈氏一族の貴公子賈宝玉(か・ほうぎょく)を主人公とし、繊細でプライドの高い美少女の林黛玉(りん・たいぎょく)、良妻賢母型の薛宝釵(せつ・ほうさ)の三角関係を軸に展開する。小説は上流階級の生活の細部を描き、主人公たちの交情を克明に記しながら進行する。清代末期から紅楼夢を専門に研究する学問を紅学といい、この言葉は現代でも使用される。毛沢東も愛読し、1950年代の中国で紅楼夢論争も戦わされた。現代中国でも非常に有名な小説であり、映画や演劇、テレビドラマ化されることが多い。
この小説の特徴はストーリー中心のロマンではなく、大貴族の深窓の令息令嬢の心理のひだが繊細に描きこまれていることにある。士大夫の経世済民という表向きの世界ではなく、弱くて感じやすい「児女の情」をテーマとするといえる。三国志演義の「武」、水滸伝の「侠」に対して紅楼夢は「情」の文学であるとされる。その一方で、主人公たちは儒教道徳や官僚の腐敗、不正に対する痛烈な批判を口にしており、乾隆盛世と呼ばれた当時の社会に対する批判的色彩も帯びている。また、当時の上流階級の日常生活が登場人物400人を超える規模で細部まで克明に描かれており、文化史的にも価値があるとされる。男女の人情を描いた中国の長篇小説としては金瓶梅に次いで古いものであるが、恋愛模様がプラトニックに徹しており情感も洗練を極めている点において好対照の位置にある。
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