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「医療大麻の真実」著者福田医師のレポート (その2)
「大麻には致死量がない」
図:薬物は、効果を発揮する用量(薬効量)と死亡する用量(致死量)の差が大きいほど安全性が高い。致死量:薬効量の比率は、ヘロインが6、アルコールが10、コカインやモルヒネは15、ニコチンが50、カフェインが100、大麻(マリファナ)は1000以上と考えられている。大麻を過剰に使っても死ぬことはない。
470)医療大麻を考える(その6):大麻には致死量が無い
【大麻取締法は大麻の医療目的での使用を禁止している】
大麻取締法は第四条で、大麻の医療使用を禁止しています。該当部分は以下のようになっています。
第四条 何人も次に掲げる行為をしてはならない。
一 大麻を輸入し、又は輸出すること(大麻研究者が、厚生労働大臣の許可を受けて、大麻を輸入し、又は輸出する場合を除く。)。
二 大麻から製造された医薬品を施用し、又は施用のため交付すること。
三 大麻から製造された医薬品の施用を受けること。
そして、『この規定に違反して、大麻から製造された医薬品を施用し、もしくは交付し、又はその施用を受けた者』は五年以下の懲役に処する(第二十四条の三)となっています。「何人も」と定められているため、患者、医者、研究者であっても、例外なしに大麻を医療目的で使用することはできません。
海外で有効性が証明されている疾患でも日本では大麻は使用できません。病気の治療目的であっても大麻を使用すれば、医者も患者も処罰されます。
大麻取締法の第一条で、『「大麻」とは、大麻草(カンナビス・サティバ・エル)及びその製品をいう。ただし、大麻草の成熟した茎及びその製品(樹脂を除く。)並びに大麻草の種子及びその製品を除く』となっています。
つまり、日本の大麻取締法は大麻草の葉と花穂(花冠)とその製品を禁止していますが、成長した大麻草の茎や種子の使用やそれ由来の製品は除外されています。
成分としての規制対象は精神作用のあるΔ9-テトラヒドロカンナビノール(THC)のみで、カンナビジオールを含めてその他の天然成分は対象外になっています。大麻草の茎や種子に由来する製品であれば、THCが天然で微量に混入していても規制されていません。
大麻取締法の第四条の問題点を理解するためには、この法律の成立過程を理解する必要があります。
【連合国総司令部(GHQ)が大麻栽培の全面禁止を要求してきた】
第二次世界大戦後、日本は1952年4月のサンフランシスコ講話条約の発効によって主権を回復するまで、アメリカ合衆国を中心とする連合国軍最高司令官総司令部による統治が行われました。連合国軍最高司令官総司令部は通称として「連合国総司令部」、「進駐軍」、「GHQ」などとも呼ばれています。
この統治の期間中、連合国総司令部から「メモランダム(覚書)」と呼ばれる様々な指令が出されました。その主な目的は日本から国家主義や軍国主義を一掃することにありましたが、行政的な指示もありました。
このメモランダムを連合軍最高司令部訓令(Supreme Command for Allied Powers Instruction Note、略してSCAPIN)と言い、1945年9月3日から1952年4月26日の間に2200を超える指令や指示が日本政府に出されています。
大麻に関しては、1945年10月12日にSCAPIN-130: Control of Narcotic Products and Records in Japan(日本における麻薬製品および記録の管理に関する件)と題された指令が最初です。
この指令(SCAPIN-130)では、麻薬性のある植物の栽培や、麻薬の製造や販売や輸出入を禁止しています。
この指令で麻薬と定義されているのは、アヘン(Opium)、コカイン(Cocaine)、モルヒネ(Morphine)、ヘロイン(Heroin)とマリファナ(Cannabis Sativa L)です。
これらの種子と草木、それらに由来する全ての成分や製剤も含まれます。
栽培中の麻薬性植物は直ちに廃棄処分にし、その量や廃棄方法や廃棄した日付などを記録し保管することを命令しています。
この指令は医師や薬剤師も含めて全ての人に適用されると明記されています。つまり、この時点では、GHQの許可が無ければ誰も麻薬は製造も使用も禁止になっています。敗戦後に軍が管理していた麻薬の横流しなどの問題に対応するためだったのかもしれません。
1946年1月22日にはSCAPIN-644が出されます。
“Establishment of an effective System for Narcotic Control in Japan.”( 日本における麻薬管理のため有効な組織を設立)というメモランダムです。
この指令(SCAPIN-644)では、麻薬の取扱いや取締のために必要な法律(麻薬取扱い者の登録や免許や分類や報告や違反者の処罰などに関して定めた法律)を制定するように日本政府に指示しています。
さらに、1947年6月28日にSCAPIN 4053-Aが出されます。これはSCAPIN-130を改正した内容です。
1945年10月12日に出されたSCAPIN-130では麻薬の輸入や生産は一切禁止されていましたが、このメモランダムではこの部分を改正して、日本における医療に必要な薬用麻薬の製造を可能にしました。
この指令では、麻薬の製造や輸入や輸出は制限されていますが、治療目的であれば大麻製剤の使用は認められていたと解釈できます。
このような連合国総司令部(GHQ)からの指令に従うために、麻薬取締法や大麻取締法が1948年に制定されます。
大麻は麻繊維の産業があるため、大麻取締法として別個の法律として制定されました。
【GHQは大麻草自体を禁止したかった】
1945年10月12日のSCAPIN-130における麻薬の定義は次のようになっています。
定義:麻薬とは、アヘン(Opium)、コカイン(Cocaine)、モルヒネ(Morphine)、ヘロイン(Heroin)、マリファナ(Cannabis Sativa L)、それらの種子と草木、いかなる形であれ、それらに由来する全ての成分や製剤を含む。
このSCAPIN-130では、大麻のところだけ「Marijuana(Cannabis Sativa L)」と大麻の学名を加えています。
マリファナは、大麻草から精神変容成分のΔ9-テトラヒドロカンナビノール(THC)を含む花穂と葉を選り分けて乾燥し、タバコのように吸えるようにしたものであり、カンナビス・サティバ・エル(Cannabis Sativa L)とは大麻草そのものを指します。
アヘンの原料となるケシやコカインの原料となるコカは、嗜好用途や医療用途しか無いのに比べて、大麻は繊維など産業用の用途が主です。
本来なら、嗜好品としてのマリファナだけを禁止すればよく、植物としての大麻草の栽培や所持まで禁止する必要はないはずです。それにも拘らず、カンナビス・サティバ・エル(Cannabis Sativa L)と大麻草そのものを禁止したのは、GHQは大麻を日本人に持たせたくなかったようです。
GHQによる大麻の全面禁止の理由は、大麻にはアヘンなどと同じ麻薬性があるからというものでした。
しかし、大麻は日本人の生活や精神性と深くかかわってきました。古来から日本で栽培されて来た大麻は麻薬成分をほとんど含まない品種であるため、日本では大麻を嗜好用に利用するという文化はなく、大麻の有害性が認識されることもありませんでした。
第二次世界大戦直後まで大麻製剤が「印度大麻草チンキ」や「印度大麻草エキス」などの名前で薬局で販売されていました。日本薬局方では大麻は第5局まで収載されていましたが、1948年に大麻取締法が公布されたため、第6局(1951年改正)以降は削除されています。現在では日本薬局方に収載されていませんが、かつては収載されていたということは、その時代には繁用される医薬品であったことを意味します。
日本では古くから大麻の繊維で縄や布などの日常生活品を作っており、大麻は重要な農産物でした。敗戦直後の貧しい農村にとっては、大麻の栽培や利用の禁止は死活問題でした。そこで、農村出身の国会議員は大反対し、官僚もGHQの指令に抵抗しました。
【産業用の大麻を残すため、医療用途を禁止した】
日本政府は農業としての大麻を何とか存続させようと、GHQ(連合国総司令部)と交渉します。
大麻は漢方薬や大麻チンキなどと医療利用の長い歴史があったのですが、GHQが大麻の麻薬性を問題にしていると考えて、精神作用のある成分を含みマリファナの原料になる花穂と葉を厳禁し、茎と種子は利用可能にして大麻の農業利用を存続させようとしたのです。
つまり、大麻の医療利用は、農業利用の存続のためのスケープゴートになったのです。
このため、大麻取締法では、大麻を『大麻草(カンナビス・サティバ・エル)及びその製品をいう。ただし、大麻草の成熟した茎及びその製品(樹脂を除く。)並びに大麻草の種子及びその製品を除く』と定義し、医療使用に関しては厳禁することになったのです。
前述のように、GHQのメモランダムのSCAPIN 4053-A(1947年6月28日)では、治療目的であれば大麻製剤の使用は認められていたと解釈できますが、農業としての麻栽培を存続させるために、大麻から麻薬が作られ使用されることを完全に防ぐために、医療使用を厳しく禁止したと考えられます。
GHQの大麻全面禁止指令を、医薬品としての大麻を厳格に取り締まることで回避しようとした結果が第四条といえます。
大麻の農業利用は、免許制度という制限付きでかろうじて全滅を免れることができました。
しかし、第四条が、その後も修正や改正が行われずに現在まで残っています。そのため、医師や研究者や患者が大麻を治療や研究目的で使用すれば、法律的に処罰されます。
【なぜ大麻取締法が改正されないのか】
大麻取締法が制定された当時は、大麻の医療利用の可能性が現在のように知られていなかったのですが、現在では、様々な病気に対する大麻の有効性や安全性が次々に明らかになっています。
そして、米国やカナダやオーストラリアやヨーロッパ諸国で医療大麻が使用されています。
大麻取締法第四条はもはや何の根拠も意味も持たないどころか、日本における医学研究の障害となり、大麻が効く可能性のある病気の患者の権利を奪うだけのものになっています。
海外で医療大麻の臨床研究や治療が行われ、多くの知見が得られているときに、70年近く前の法律に縛られているのは、明らかに間違いと言えます。先進諸国で医療大麻の臨床試験や治療での使用ができないのは日本だけになりつつあります。
第四条の改正(削除)の必要性は、医学的に多くの根拠があります。それができないのは、単に行政の怠慢しか理由がありません。
前述のように、当時の農林水産省は、日本における主要農産物であった大麻栽培を、免許制を導入することで全面禁止の要求から守ろうとしました。一方、厚生省は、大麻禁止の理由が大麻に含まれる麻薬成分にあると知り、大麻からの医薬品の製造および使用を例外なしに禁止しました。
日本の官僚たちは、進駐軍による統治が終われば、大麻取締法を改正して大麻の栽培や利用を自由にできる状態に戻せると思っていましたが、一度制定された法律は行政の怠慢によってその後も改正されないままになってしまいました。
大麻取締法が大麻の医療目的での使用を例外なく禁止しているため、近年になって大麻の医療用途や有効性が次々に明らかになり、大麻由来の医薬品が海外で販売されても、日本では大麻を使った臨床試験すらできない状態が続いています。
【正当な根拠がなく大麻取締が始まった】
米国では1930年代まで、医薬品として医師が普通に大麻製剤を処方していたのですが、1937年にマリファナ課税法(実質的にはマリファナ禁止法)の施行によって、米国では大麻の医療応用や研究は制限されるようになります。
このマリファナ課税法は税金を払って連邦政府のスタンプをもらわないとマリファナを栽培したり販売できないという法律ですが、連邦政府のスタンプをもらうプロセスが存在しないため、だれもマリファナを合法的に扱えなくなりました。
米国連邦政府や麻薬取締局は大麻草撲滅のキャンペーンを行いました。
しかし、大麻禁止の背景には、化学繊維業界やエネルギー産業を守るために制定したことが最大の理由とも言われています。
その強度、柔軟性、暖かさ、長持ちするという特性から大麻草は極めて優れた天然繊維であり、1年で大きく育つ大麻はバイオマス(再生可能な生物由来の有機性資源)として最も利用価値が高いと言われています。
大麻が合法化されれば、医薬品の全需要の10~20%が医療大麻に取って代わられるという予測もあります。つまり、化学繊維業界やエネルギー産業や製薬企業などに関連する様々な団体が、政治家やマスコミを使って大麻草を大々的に抑圧したと言われています。
あるいは米国では1933年に禁酒法が廃止されたため、取締官の雇用を守るために酒に代わって大麻が取締の対象になったという説もあります。大麻禁止法の中心人物であった麻薬取締局のハリー・アンスリンガー局長が、全く根拠のない理由で、大麻取締のキャンペーンを行ったことは有名な話です。
このような背景で、日本を米国産の石油繊維の市場にするために、大麻栽培を禁止する法律を米国が無理矢理押し付けて来たとも言われています。
【大麻を解禁しても犯罪は増えない】
厚労省や警察は「大麻は危険な薬物である」と喧伝しています。日本では大麻に関する議論は、覚せい剤やヘロインなどの麻薬と同一視されて「ダメ・ゼッタイ」のスローガンのもとで完全な悪者扱いとなっています。
公益財団法人「麻薬・覚せい剤乱用防止センター」という厚生労働省の外郭団体が国民に発している大麻草の弊害の情報は現在では科学的根拠の無いものと言わざるを得ません。
このセンターのホームページの大麻の説明では、『大麻を乱用すると気管支や喉を痛めるほか、免疫力の低下や白血球の減少などの深刻な症状も報告されています。また「大麻精神病」と呼ばれる独特の妄想や異常行動、思考力低下などを引き起こし普通の社会生活を送れなくなるだけではなく犯罪の原因となる場合もあります。また、乱用を止めてもフラッシュバックという後遺症が長期にわたって残るため軽い気持ちで始めたつもりが一生の問題となってしまうのです。』と記載されています。
しかし、この内容の根拠となるようなデータは厚労省も警察も持っておらず、過去に調査したこともありません。
GHQから大麻を規制するように命令されたために仕方無く法律を作ったのですが、大麻が社会問題になっていた訳でもなく、人体に対する毒性や、暴力や犯罪との結びつきも一切調査したことが無いまま、規制が続いているのが、大麻の実情です。
医学的には大麻がアルコールやタバコより安全であることは常識になっています。
米国国立薬物乱用研究所(National Institute of Drug Abuse)のジャック・ヘニングフィールド博士は「マリファナはアルコールやニコチンやカフェインよりも依存性や離脱症状が弱い」と言っています。
依存性(薬の使用を止められない状態になること)の強さは、強い方からニコチン、ヘロイン、コカイン、アルコール、カフェイン、マリファナの順番です。
離脱症状(連用している薬物を完全に断った時に禁断症状が現れることで、身体依存を意味する)もこれらの中でマリファナが最も弱く、カフェインよりも離脱症状は弱いと薬物乱用の専門家は評価しています。
つまり、大麻は酒やタバコやコーヒーより中毒になりにくいことは医学的に証明されているのです(下表)。
アメリカ合衆国のコロラド州では2013年1月5日に大麻の所持と栽培が合法化されました。大麻の販売についてはライセンスや流通の規制や準備のため1年遅れて解禁され、2014年1月に大麻使用は娯楽用でも完全に合法化になっています。
大麻が合法化されたことで、ブラックマーケットが無くなり健全なマーケットが生まれ、大麻産業での雇用も増えています。大麻の販売により大麻目的の観光客や州の税収も増えています。
大麻合法化に伴って未成年者の使用が増えるのではないかという懸念がありましたが、コロラド公衆衛生・環境局が行った調査では大麻を使ったことのある高校生は減っているという結果が得られています。
闇の売人(ブラックマーケット)が駆逐されることで販売が正規ルートに収束し、それによって未成年者などへの不適切な販売が減ったためと考えられています。
大麻を吸うと酔ったような気分になりますが、それで病気になったり、粗暴になって周りに迷惑をかけたり、精神異常になってしまうことは実際としてはありません。一時的に記憶力や知的活動が低下することはありますが、アルコールと同じで、覚めれば元に戻ります。
1990年から2006年までのアメリカ合衆国の50州全ての犯罪率を追跡調査し、医療用大麻を合法化した州での犯罪率の変化を検討した報告があります。その結果、医療大麻法の施行が、殺人や強盗や暴行などの暴力犯罪を増やすことはなく、むしろ、殺人と暴行の犯罪率の減少に関係している可能性が指摘されています。飲酒は暴力犯罪を増やしますが、大麻にはそのようなリスクは無いと言えます。
WHOからの報告(2011年)によると、アルコールとタバコが原因の疾患による死亡数は全死亡の12%を占めると推定されています。
米国では喫煙による健康障害に対する医療費が1年間に960億ドル、アルコールの場合は、健康障害の他にアルコール関連の犯罪や社会問題に対する費用を含めると、トータルのコストは年間2000億ドルになると推定されています。つまり、タバコとアルコールによる健康や社会に対する被害は米国では1年間で30兆円を超えると推定されています。タバコやアルコールに比べると健康や社会に対する大麻の有害性は極めて低いと言えます。
モルヒネのようなオピオイドは致死量がありますが大麻はいくら吸っても死にません。実際にテトラヒドロカンナビノール(THC)の致死量を検討した動物実験でも、THCの致死量が極めて高いことが報告されています。
例えば、ラットを使った実験では1回の経口投与で50%のラットが死亡する量(50%致死量)は体重1kg当たり約1000mgです。犬やサルではもっと高く1回の経口投与による50%致死量は体重1kg当たり3000mg以上と報告されています。人間に注射でTHCを投与した場合の致死量は体重1kg当たり30mgと推定されています。体重70kgの人で2100mgのTHCになります。
合成THC製剤での1日摂取量(経口投与)は10〜20mg程度です。
大麻の過剰摂取による死亡例は今まで報告がないと言われています。大麻を喫煙した場合、致死量に達する量の100分の1以下の摂取量で眠ってしまうため、大麻の過剰摂取で死ぬ事はあり得ないと言えます。
米国では医薬品(処方薬)の過剰投与による死亡者数が増えていますが、原因薬として最も多いのがモルヒネなどのオピオイド系鎮痛薬で年間16000人を超えています。このオピオイド系鎮痛薬による死亡者数は、医療大麻が合法化された州では減少していることが報告されています。
がん以外の慢性疼痛に対するオピオイドの処方が増えている米国では、薬剤の過剰投与による死亡で最も多いのがオピオイド系鎮痛薬です。米国では、オピオイド系鎮痛薬の過剰投与による死亡が、1999年には4400人、2010年には16,000人という統計が報告されています。オピオイド鎮痛薬による死亡数が年々増加していて問題になっています。
薬物は、効果を発揮する用量(薬効量)と死亡する用量(致死量)の差が大きいほど安全性が高いと言えます。
例えば、アルコールは普通に酔う量が33g(22~40g)で、致死量が330g(276~455g)というデータがあります。この場合、致死量と薬効量の比率は10になります。
このような致死量:薬効量の比率はヘロインが6、コカインやモルヒネは15、ニコチンが50、カフェインが100、大麻(マリファナ)は1000以上と考えられています(トップの図)。
つまり、モルヒネは安全域が狭いので、耐性や依存によって過剰に服用すると、死亡の原因になりやすいと言えます。一方、THCは延髄の呼吸中枢に作用しないため、呼吸を抑制する作用はありません。オピオイドに比べて大麻の安全性が高いのは、延髄の呼吸中枢に作用しないというのが主な理由になっています。
大麻の医療用途や安全性に関する研究が進み、日本でも医療大麻の使用の許可を求める意見が増えています。しかし一方、大麻は犯罪や濫用や中毒と言った危険なイメージと結びつけられがちです。その結果、大麻に関する偏見や誤解も多くあります。
マリファナは一度吸うと中毒になると良く言われていますが、前述のようにマリファナには身体的依存は無いので中毒になる可能性は低いと言えます。
「医療大麻の真実」著者福田医師のレポート (その2)
「大麻には致死量がない」
図:薬物は、効果を発揮する用量(薬効量)と死亡する用量(致死量)の差が大きいほど安全性が高い。致死量:薬効量の比率は、ヘロインが6、アルコールが10、コカインやモルヒネは15、ニコチンが50、カフェインが100、大麻(マリファナ)は1000以上と考えられている。大麻を過剰に使っても死ぬことはない。
470)医療大麻を考える(その6):大麻には致死量が無い
【大麻取締法は大麻の医療目的での使用を禁止している】
大麻取締法は第四条で、大麻の医療使用を禁止しています。該当部分は以下のようになっています。
第四条 何人も次に掲げる行為をしてはならない。
一 大麻を輸入し、又は輸出すること(大麻研究者が、厚生労働大臣の許可を受けて、大麻を輸入し、又は輸出する場合を除く。)。
二 大麻から製造された医薬品を施用し、又は施用のため交付すること。
三 大麻から製造された医薬品の施用を受けること。
そして、『この規定に違反して、大麻から製造された医薬品を施用し、もしくは交付し、又はその施用を受けた者』は五年以下の懲役に処する(第二十四条の三)となっています。「何人も」と定められているため、患者、医者、研究者であっても、例外なしに大麻を医療目的で使用することはできません。
海外で有効性が証明されている疾患でも日本では大麻は使用できません。病気の治療目的であっても大麻を使用すれば、医者も患者も処罰されます。
大麻取締法の第一条で、『「大麻」とは、大麻草(カンナビス・サティバ・エル)及びその製品をいう。ただし、大麻草の成熟した茎及びその製品(樹脂を除く。)並びに大麻草の種子及びその製品を除く』となっています。
つまり、日本の大麻取締法は大麻草の葉と花穂(花冠)とその製品を禁止していますが、成長した大麻草の茎や種子の使用やそれ由来の製品は除外されています。
成分としての規制対象は精神作用のあるΔ9-テトラヒドロカンナビノール(THC)のみで、カンナビジオールを含めてその他の天然成分は対象外になっています。大麻草の茎や種子に由来する製品であれば、THCが天然で微量に混入していても規制されていません。
大麻取締法の第四条の問題点を理解するためには、この法律の成立過程を理解する必要があります。
【連合国総司令部(GHQ)が大麻栽培の全面禁止を要求してきた】
第二次世界大戦後、日本は1952年4月のサンフランシスコ講話条約の発効によって主権を回復するまで、アメリカ合衆国を中心とする連合国軍最高司令官総司令部による統治が行われました。連合国軍最高司令官総司令部は通称として「連合国総司令部」、「進駐軍」、「GHQ」などとも呼ばれています。
この統治の期間中、連合国総司令部から「メモランダム(覚書)」と呼ばれる様々な指令が出されました。その主な目的は日本から国家主義や軍国主義を一掃することにありましたが、行政的な指示もありました。
このメモランダムを連合軍最高司令部訓令(Supreme Command for Allied Powers Instruction Note、略してSCAPIN)と言い、1945年9月3日から1952年4月26日の間に2200を超える指令や指示が日本政府に出されています。
大麻に関しては、1945年10月12日にSCAPIN-130: Control of Narcotic Products and Records in Japan(日本における麻薬製品および記録の管理に関する件)と題された指令が最初です。
この指令(SCAPIN-130)では、麻薬性のある植物の栽培や、麻薬の製造や販売や輸出入を禁止しています。
この指令で麻薬と定義されているのは、アヘン(Opium)、コカイン(Cocaine)、モルヒネ(Morphine)、ヘロイン(Heroin)とマリファナ(Cannabis Sativa L)です。
これらの種子と草木、それらに由来する全ての成分や製剤も含まれます。
栽培中の麻薬性植物は直ちに廃棄処分にし、その量や廃棄方法や廃棄した日付などを記録し保管することを命令しています。
この指令は医師や薬剤師も含めて全ての人に適用されると明記されています。つまり、この時点では、GHQの許可が無ければ誰も麻薬は製造も使用も禁止になっています。敗戦後に軍が管理していた麻薬の横流しなどの問題に対応するためだったのかもしれません。
1946年1月22日にはSCAPIN-644が出されます。
“Establishment of an effective System for Narcotic Control in Japan.”( 日本における麻薬管理のため有効な組織を設立)というメモランダムです。
この指令(SCAPIN-644)では、麻薬の取扱いや取締のために必要な法律(麻薬取扱い者の登録や免許や分類や報告や違反者の処罰などに関して定めた法律)を制定するように日本政府に指示しています。
さらに、1947年6月28日にSCAPIN 4053-Aが出されます。これはSCAPIN-130を改正した内容です。
1945年10月12日に出されたSCAPIN-130では麻薬の輸入や生産は一切禁止されていましたが、このメモランダムではこの部分を改正して、日本における医療に必要な薬用麻薬の製造を可能にしました。
この指令では、麻薬の製造や輸入や輸出は制限されていますが、治療目的であれば大麻製剤の使用は認められていたと解釈できます。
このような連合国総司令部(GHQ)からの指令に従うために、麻薬取締法や大麻取締法が1948年に制定されます。
大麻は麻繊維の産業があるため、大麻取締法として別個の法律として制定されました。
【GHQは大麻草自体を禁止したかった】
1945年10月12日のSCAPIN-130における麻薬の定義は次のようになっています。
定義:麻薬とは、アヘン(Opium)、コカイン(Cocaine)、モルヒネ(Morphine)、ヘロイン(Heroin)、マリファナ(Cannabis Sativa L)、それらの種子と草木、いかなる形であれ、それらに由来する全ての成分や製剤を含む。
このSCAPIN-130では、大麻のところだけ「Marijuana(Cannabis Sativa L)」と大麻の学名を加えています。
マリファナは、大麻草から精神変容成分のΔ9-テトラヒドロカンナビノール(THC)を含む花穂と葉を選り分けて乾燥し、タバコのように吸えるようにしたものであり、カンナビス・サティバ・エル(Cannabis Sativa L)とは大麻草そのものを指します。
アヘンの原料となるケシやコカインの原料となるコカは、嗜好用途や医療用途しか無いのに比べて、大麻は繊維など産業用の用途が主です。
本来なら、嗜好品としてのマリファナだけを禁止すればよく、植物としての大麻草の栽培や所持まで禁止する必要はないはずです。それにも拘らず、カンナビス・サティバ・エル(Cannabis Sativa L)と大麻草そのものを禁止したのは、GHQは大麻を日本人に持たせたくなかったようです。
GHQによる大麻の全面禁止の理由は、大麻にはアヘンなどと同じ麻薬性があるからというものでした。
しかし、大麻は日本人の生活や精神性と深くかかわってきました。古来から日本で栽培されて来た大麻は麻薬成分をほとんど含まない品種であるため、日本では大麻を嗜好用に利用するという文化はなく、大麻の有害性が認識されることもありませんでした。
第二次世界大戦直後まで大麻製剤が「印度大麻草チンキ」や「印度大麻草エキス」などの名前で薬局で販売されていました。日本薬局方では大麻は第5局まで収載されていましたが、1948年に大麻取締法が公布されたため、第6局(1951年改正)以降は削除されています。現在では日本薬局方に収載されていませんが、かつては収載されていたということは、その時代には繁用される医薬品であったことを意味します。
日本では古くから大麻の繊維で縄や布などの日常生活品を作っており、大麻は重要な農産物でした。敗戦直後の貧しい農村にとっては、大麻の栽培や利用の禁止は死活問題でした。そこで、農村出身の国会議員は大反対し、官僚もGHQの指令に抵抗しました。
【産業用の大麻を残すため、医療用途を禁止した】
日本政府は農業としての大麻を何とか存続させようと、GHQ(連合国総司令部)と交渉します。
大麻は漢方薬や大麻チンキなどと医療利用の長い歴史があったのですが、GHQが大麻の麻薬性を問題にしていると考えて、精神作用のある成分を含みマリファナの原料になる花穂と葉を厳禁し、茎と種子は利用可能にして大麻の農業利用を存続させようとしたのです。
つまり、大麻の医療利用は、農業利用の存続のためのスケープゴートになったのです。
このため、大麻取締法では、大麻を『大麻草(カンナビス・サティバ・エル)及びその製品をいう。ただし、大麻草の成熟した茎及びその製品(樹脂を除く。)並びに大麻草の種子及びその製品を除く』と定義し、医療使用に関しては厳禁することになったのです。
前述のように、GHQのメモランダムのSCAPIN 4053-A(1947年6月28日)では、治療目的であれば大麻製剤の使用は認められていたと解釈できますが、農業としての麻栽培を存続させるために、大麻から麻薬が作られ使用されることを完全に防ぐために、医療使用を厳しく禁止したと考えられます。
GHQの大麻全面禁止指令を、医薬品としての大麻を厳格に取り締まることで回避しようとした結果が第四条といえます。
大麻の農業利用は、免許制度という制限付きでかろうじて全滅を免れることができました。
しかし、第四条が、その後も修正や改正が行われずに現在まで残っています。そのため、医師や研究者や患者が大麻を治療や研究目的で使用すれば、法律的に処罰されます。
【なぜ大麻取締法が改正されないのか】
大麻取締法が制定された当時は、大麻の医療利用の可能性が現在のように知られていなかったのですが、現在では、様々な病気に対する大麻の有効性や安全性が次々に明らかになっています。
そして、米国やカナダやオーストラリアやヨーロッパ諸国で医療大麻が使用されています。
大麻取締法第四条はもはや何の根拠も意味も持たないどころか、日本における医学研究の障害となり、大麻が効く可能性のある病気の患者の権利を奪うだけのものになっています。
海外で医療大麻の臨床研究や治療が行われ、多くの知見が得られているときに、70年近く前の法律に縛られているのは、明らかに間違いと言えます。先進諸国で医療大麻の臨床試験や治療での使用ができないのは日本だけになりつつあります。
第四条の改正(削除)の必要性は、医学的に多くの根拠があります。それができないのは、単に行政の怠慢しか理由がありません。
前述のように、当時の農林水産省は、日本における主要農産物であった大麻栽培を、免許制を導入することで全面禁止の要求から守ろうとしました。一方、厚生省は、大麻禁止の理由が大麻に含まれる麻薬成分にあると知り、大麻からの医薬品の製造および使用を例外なしに禁止しました。
日本の官僚たちは、進駐軍による統治が終われば、大麻取締法を改正して大麻の栽培や利用を自由にできる状態に戻せると思っていましたが、一度制定された法律は行政の怠慢によってその後も改正されないままになってしまいました。
大麻取締法が大麻の医療目的での使用を例外なく禁止しているため、近年になって大麻の医療用途や有効性が次々に明らかになり、大麻由来の医薬品が海外で販売されても、日本では大麻を使った臨床試験すらできない状態が続いています。
【正当な根拠がなく大麻取締が始まった】
米国では1930年代まで、医薬品として医師が普通に大麻製剤を処方していたのですが、1937年にマリファナ課税法(実質的にはマリファナ禁止法)の施行によって、米国では大麻の医療応用や研究は制限されるようになります。
このマリファナ課税法は税金を払って連邦政府のスタンプをもらわないとマリファナを栽培したり販売できないという法律ですが、連邦政府のスタンプをもらうプロセスが存在しないため、だれもマリファナを合法的に扱えなくなりました。
米国連邦政府や麻薬取締局は大麻草撲滅のキャンペーンを行いました。
しかし、大麻禁止の背景には、化学繊維業界やエネルギー産業を守るために制定したことが最大の理由とも言われています。
その強度、柔軟性、暖かさ、長持ちするという特性から大麻草は極めて優れた天然繊維であり、1年で大きく育つ大麻はバイオマス(再生可能な生物由来の有機性資源)として最も利用価値が高いと言われています。
大麻が合法化されれば、医薬品の全需要の10~20%が医療大麻に取って代わられるという予測もあります。つまり、化学繊維業界やエネルギー産業や製薬企業などに関連する様々な団体が、政治家やマスコミを使って大麻草を大々的に抑圧したと言われています。
あるいは米国では1933年に禁酒法が廃止されたため、取締官の雇用を守るために酒に代わって大麻が取締の対象になったという説もあります。大麻禁止法の中心人物であった麻薬取締局のハリー・アンスリンガー局長が、全く根拠のない理由で、大麻取締のキャンペーンを行ったことは有名な話です。
このような背景で、日本を米国産の石油繊維の市場にするために、大麻栽培を禁止する法律を米国が無理矢理押し付けて来たとも言われています。
【大麻を解禁しても犯罪は増えない】
厚労省や警察は「大麻は危険な薬物である」と喧伝しています。日本では大麻に関する議論は、覚せい剤やヘロインなどの麻薬と同一視されて「ダメ・ゼッタイ」のスローガンのもとで完全な悪者扱いとなっています。
公益財団法人「麻薬・覚せい剤乱用防止センター」という厚生労働省の外郭団体が国民に発している大麻草の弊害の情報は現在では科学的根拠の無いものと言わざるを得ません。
このセンターのホームページの大麻の説明では、『大麻を乱用すると気管支や喉を痛めるほか、免疫力の低下や白血球の減少などの深刻な症状も報告されています。また「大麻精神病」と呼ばれる独特の妄想や異常行動、思考力低下などを引き起こし普通の社会生活を送れなくなるだけではなく犯罪の原因となる場合もあります。また、乱用を止めてもフラッシュバックという後遺症が長期にわたって残るため軽い気持ちで始めたつもりが一生の問題となってしまうのです。』と記載されています。
しかし、この内容の根拠となるようなデータは厚労省も警察も持っておらず、過去に調査したこともありません。
GHQから大麻を規制するように命令されたために仕方無く法律を作ったのですが、大麻が社会問題になっていた訳でもなく、人体に対する毒性や、暴力や犯罪との結びつきも一切調査したことが無いまま、規制が続いているのが、大麻の実情です。
医学的には大麻がアルコールやタバコより安全であることは常識になっています。
米国国立薬物乱用研究所(National Institute of Drug Abuse)のジャック・ヘニングフィールド博士は「マリファナはアルコールやニコチンやカフェインよりも依存性や離脱症状が弱い」と言っています。
依存性(薬の使用を止められない状態になること)の強さは、強い方からニコチン、ヘロイン、コカイン、アルコール、カフェイン、マリファナの順番です。
離脱症状(連用している薬物を完全に断った時に禁断症状が現れることで、身体依存を意味する)もこれらの中でマリファナが最も弱く、カフェインよりも離脱症状は弱いと薬物乱用の専門家は評価しています。
つまり、大麻は酒やタバコやコーヒーより中毒になりにくいことは医学的に証明されているのです(下表)。
アメリカ合衆国のコロラド州では2013年1月5日に大麻の所持と栽培が合法化されました。大麻の販売についてはライセンスや流通の規制や準備のため1年遅れて解禁され、2014年1月に大麻使用は娯楽用でも完全に合法化になっています。
大麻が合法化されたことで、ブラックマーケットが無くなり健全なマーケットが生まれ、大麻産業での雇用も増えています。大麻の販売により大麻目的の観光客や州の税収も増えています。
大麻合法化に伴って未成年者の使用が増えるのではないかという懸念がありましたが、コロラド公衆衛生・環境局が行った調査では大麻を使ったことのある高校生は減っているという結果が得られています。
闇の売人(ブラックマーケット)が駆逐されることで販売が正規ルートに収束し、それによって未成年者などへの不適切な販売が減ったためと考えられています。
大麻を吸うと酔ったような気分になりますが、それで病気になったり、粗暴になって周りに迷惑をかけたり、精神異常になってしまうことは実際としてはありません。一時的に記憶力や知的活動が低下することはありますが、アルコールと同じで、覚めれば元に戻ります。
1990年から2006年までのアメリカ合衆国の50州全ての犯罪率を追跡調査し、医療用大麻を合法化した州での犯罪率の変化を検討した報告があります。その結果、医療大麻法の施行が、殺人や強盗や暴行などの暴力犯罪を増やすことはなく、むしろ、殺人と暴行の犯罪率の減少に関係している可能性が指摘されています。飲酒は暴力犯罪を増やしますが、大麻にはそのようなリスクは無いと言えます。
WHOからの報告(2011年)によると、アルコールとタバコが原因の疾患による死亡数は全死亡の12%を占めると推定されています。
米国では喫煙による健康障害に対する医療費が1年間に960億ドル、アルコールの場合は、健康障害の他にアルコール関連の犯罪や社会問題に対する費用を含めると、トータルのコストは年間2000億ドルになると推定されています。つまり、タバコとアルコールによる健康や社会に対する被害は米国では1年間で30兆円を超えると推定されています。タバコやアルコールに比べると健康や社会に対する大麻の有害性は極めて低いと言えます。
モルヒネのようなオピオイドは致死量がありますが大麻はいくら吸っても死にません。実際にテトラヒドロカンナビノール(THC)の致死量を検討した動物実験でも、THCの致死量が極めて高いことが報告されています。
例えば、ラットを使った実験では1回の経口投与で50%のラットが死亡する量(50%致死量)は体重1kg当たり約1000mgです。犬やサルではもっと高く1回の経口投与による50%致死量は体重1kg当たり3000mg以上と報告されています。人間に注射でTHCを投与した場合の致死量は体重1kg当たり30mgと推定されています。体重70kgの人で2100mgのTHCになります。
合成THC製剤での1日摂取量(経口投与)は10〜20mg程度です。
大麻の過剰摂取による死亡例は今まで報告がないと言われています。大麻を喫煙した場合、致死量に達する量の100分の1以下の摂取量で眠ってしまうため、大麻の過剰摂取で死ぬ事はあり得ないと言えます。
米国では医薬品(処方薬)の過剰投与による死亡者数が増えていますが、原因薬として最も多いのがモルヒネなどのオピオイド系鎮痛薬で年間16000人を超えています。このオピオイド系鎮痛薬による死亡者数は、医療大麻が合法化された州では減少していることが報告されています。
がん以外の慢性疼痛に対するオピオイドの処方が増えている米国では、薬剤の過剰投与による死亡で最も多いのがオピオイド系鎮痛薬です。米国では、オピオイド系鎮痛薬の過剰投与による死亡が、1999年には4400人、2010年には16,000人という統計が報告されています。オピオイド鎮痛薬による死亡数が年々増加していて問題になっています。
薬物は、効果を発揮する用量(薬効量)と死亡する用量(致死量)の差が大きいほど安全性が高いと言えます。
例えば、アルコールは普通に酔う量が33g(22~40g)で、致死量が330g(276~455g)というデータがあります。この場合、致死量と薬効量の比率は10になります。
このような致死量:薬効量の比率はヘロインが6、コカインやモルヒネは15、ニコチンが50、カフェインが100、大麻(マリファナ)は1000以上と考えられています(トップの図)。
つまり、モルヒネは安全域が狭いので、耐性や依存によって過剰に服用すると、死亡の原因になりやすいと言えます。一方、THCは延髄の呼吸中枢に作用しないため、呼吸を抑制する作用はありません。オピオイドに比べて大麻の安全性が高いのは、延髄の呼吸中枢に作用しないというのが主な理由になっています。
大麻の医療用途や安全性に関する研究が進み、日本でも医療大麻の使用の許可を求める意見が増えています。しかし一方、大麻は犯罪や濫用や中毒と言った危険なイメージと結びつけられがちです。その結果、大麻に関する偏見や誤解も多くあります。
マリファナは一度吸うと中毒になると良く言われていますが、前述のようにマリファナには身体的依存は無いので中毒になる可能性は低いと言えます。
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